「記号接地」とワーキングメモリ

読解力や科学など多分野の学力が世界トップ級のフィンランドでは、学力テスト等の結果をもとに原因分析に力を入れています。対して日本は、学力テスト等の結果をもとにその対策に力を入れています。対策とは、点数を上げるために昔ながらの特訓、反復学習等です。

大切なことは、脳科学や認知科学の知見を活かしてつまずきの根本原因を見つけて克服することです。

認知科学には『記号接地』という言葉があります。接地とは、こどもが経験から自分で考え抽象化して概念を身体の一部にすることです。これには時間がかかりますが、後の学びのために必要です。(慶応大学教授 今井むつみ氏の言葉)

こどもが主体的に学ぶためには「経験」「体験」が欠かせません。これが学力の基盤となります。

わたしたちは、セミナー等で下図を示し、解説をしています。右端にある「長期記憶」には、過去に体験したことや過去に学んだ知識が脳内に蓄えられていることを示しています。この「長期記憶」から情報を取り出し、組み合わせて目の前の文章問題などに取り組んでいるのです。その際に脳内のワーキングメモリが使われています。


わたしたちは、こどもの学力の基盤に関わるワーキングメモリに働きかける教材制作に取り組んでいます。今井先生が書かれている「記号接地」ができるようになるために、ワーキングメモリもカギとなるとわたしたちは考えています。

わたしたち大人は認知科学や脳科学の研究をもとに、一人ひとり異なるこどもの学びの個性に合わせた学習に関わっていくことが大切だと思います。

<引用・参照>日本経済新聞朝刊2023.12.20