問題集と「味読」

小学生になると「教科」で学習内容が分けられ、その理解度はテストの点数で測定されます。但し、先生から学期に一度渡される通知表には、テストの点数のみならず、授業に臨む姿勢や態度などにより、細分化された評価が児童に与えられます。

教科の指導は教科書を中心に進められており、皆に等しく配布されるこの教科書には細部に至るまで様々な工夫が施されています。

国語科を例に挙げると、教科書には原典の一部(または全文)が抜粋されており、授業ではその背景知識を含めた幅広い知識を得ることや発表活動を通してアウトプットすることなどが展開されています。因みに、授業を通して児童が得られることは学習指導要領に明記されています。

教科書が児童の学習の基礎を形成する最適な教材であることに異論のある方はほぼいないでしょう。

「認知能力」即ち、テストで測ることのできる力を重視すると、教科書準拠問題集や発展問題集を解くことで学力を高めようとすることにつながります。それはやむを得ない手段ではありますが「全て」ではないはずです。しかし、それが「全て」とされてきた学習のあり方がいま見直されています。

学校の授業のようにじっくりと作品を味わいながら学ぶ「味読」こそが大切なことです。この「味読」の蓄積が多いほど、学年が上がってからも学習の基盤が揺るがないものになると私たちは考えています。味読の蓄積は「体験」と言い換えても良いでしょう。

国語の問題集は、その構成上、原典の一部もしくは全文がそのまま掲載されているケースはほぼありません。設問に答えさせるために、括弧や下線が引かれており、作品を味わう構成にはなっていません。ですから、問題集を解いて学力を高める前、もしくはその後にできるだけ原典を味わうことを取り入れてみてはいかがでしょうか。もちろん、問題集を解くことで作品への理解が深まることは言うまでもありませんので、その前後に取り入れることが児童の学習の幅を広げることにつながるでしょう。