258.読めているのに理解できていない生徒①

生徒の授業中の様子について、「音読はスラスラできているのに、内容を聞くと答えられない」といった事例を学校や学習塾等の先生方からたびたび耳にします。

一見“読めている”ように見えるのに、実は意味を理解できていない生徒は、授業の中で見過ごされがちです。成績の中間層に潜んでいることも多く、学習支援の手が届きにくいのが現状です。

読むことには、大きく2つの側面があります。1つは「音声化する力」です。これは文字を音に変換する力です。もう1つは「意味をつかむ力」です。これは文脈を把握し、全体をつなげて理解する力です。

音読が上手な生徒は、前者の力が高い場合が多いのですが、後者の力、つまり「読んだ内容を頭の中でイメージし、意味づけする力」が不足しているケースが少なくありません。ここには「ワーキングメモリ(作業記憶)」が大きく関わっています。

ワーキングメモリは、「文章の前半を覚えておきながら後半を読む」「登場人物と出来事を関連づけて理解する」といった、「情報の記憶と処理」を支えています。(因みに、ワーキングメモリを「記憶力」と捉えている方が多いようですが、「記憶と処理」に関わる機能であることを付け加えておきます。)

さて、この力が弱いと、読解では次のようなつまずきが起こります。
・文章が長くなると、最初の内容を忘れてしまう
・接続詞や代名詞(「しかし」「その人」など)の意味がつかめない
・一文ごとの理解はできても、全体の構造がつかめない

次回のコラムでは、このような生徒への指導のアプローチを提示します。


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