257.高齢者のワーキングメモリ

『高齢者が健全な脳と心のはたらきを減弱させることの背景には、ワーキングメモリが加齢とともに低下することが挙げられる。ワーキングメモリは学習や理解などの基盤をなすが、発達的には、数字や単語を集中して記憶する短期記憶や、過去の出来事などを記憶する長期記憶に比べて遅れて形成される。しかし、その一方で、加齢による影響を最も早く受ける。そのため、高齢者は自宅の住所など過去に記憶したものは覚えているものの、日常行動において段取りを間違えたり、物忘れや行為のし忘れが頻発したりするなど社会生活に影響がおよぶことになる。
(中略)
このように情報化、高齢化が進む現代においては、ワーキングメモリの働きの低下を意識的に食い止めることが必要となってくるのである。こうした課題に対して、記憶力を高めることが脳機能の健全化につながると考えられがちである。しかし、問題なのはワーキングメモリの健全な維持であって、記憶力を強化するだけでは不十分である。』(『ワーキングメモリと人間の知性』苧坂満里子著)

加齢とともに、自身のパフォーマンスが低下してきたと感じることがあるでしょう。加齢とともに低下するワーキングメモリの機能を健全に維持するために、ワーキングメモリを日常的に使うことが欠かせません。神経科学の世界には「Use it or lose it.」の原則があります。脳の神経細胞同士をつなぐニューロンは、使わないと刈り取られるということです。世代を問わず「Use it.」の習慣化を図ることを目指し、私たちは2種類のワークブックを出版しました。

ぜひご自宅でのトレーニングの一環としてご活用ください。
脳力道場ワークブック001
脳力道場 大人の教養シリーズ【古文編】奥の細道その一

<引用・参照>
・『ワーキングメモリと人間の知性』苧坂満里子著
・『書籍出版のお知らせ

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