281. 「推論の力」を育む
慶応大学名誉教授の今井むつみさんによる解説を引用します。
『読解とは何か。認知科学の観点から言うと、文章には直接書かれていないことも自分の知識の枠組みを使って補足しながら、何を言おうとしているのか推論していくこと。推論は、文脈によって変わる言葉の意味を考える場合などにも必要だ。良い推論をできることが、良い読解につながる。流ちょうな読解には、豊かな語彙も欠かせない。だが、日常生活で得られる語彙は限られている。読書の役割は大きいと言える。新たな語彙を獲得できるだけでなく、推論の訓練もできる。』(2026.3.20 読売新聞朝刊『読解力向上フォーラム+』)
また、今井さんは「今の子どもには読解力がない」と言われることについて、読解力を三段階で解説しています。
① 文のレベルで情報を正しく解釈できる
② 自分の知識を使って直接書かれていないことを補い、文章全体で正しく読み取れる
③ 文章全体のメッセージを自分の知識に関係づけ、新たな思考を生み出せる
最後に、人間は推論能力の塊であり、読みたいという意欲があれば自分でどんどん読んでいくようになることから、「本人が読みたい本」を与えることが第一歩であると締めくくられています。
子どもの教育の現場では「主体性」がキーワードです。子どもの主体性は、「好きなこと」「楽しいと思うこと」「人に伝えたいこと」などを大人が上手に引き出すはたらきかけが求められていると考えます。この主体性と併せて、一人ひとりに適した支援をすることが、子どもが自立に向かうために必要なことです。教育の現場にいまだ根強い「管理」のバランスを見直し、主体的に思考できる力を育んでいくことこそが私たちの役割なのではないでしょうか。主体的な体験、読書、学びを通して推論の力を育むことが、生涯学習の基礎となるのです。
<引用・参照> 2026.3.20 読売新聞朝刊『読解力向上フォーラム+』
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