263. 「読める」と「わかる」の壁①
教科指導や家庭学習の場面では次のような「つまずき」が見受けられます。「スラスラと音読ができ語彙のチェックテストにはいつも合格するが、文章の内容を尋ねると沈黙する」「短い文の問題にはスムースに解答しているが、段落が増えて文章量が多くなると問題を解く時間がとても長くなり、解答できない時もある」
これらは長らく生徒の努力不足や集中力の問題として片付けられてきました。しかし、これらは読解のプロセスで起きている「つまずき」のサインなのです。教科指導を担う先生や学習のサポートをする大人がこの「つまずき」のサインに対して適切に学習支援をすることが望まれます。
読解のプロセスでは、語彙、背景知識、文法などの【材料】とワーキングメモリ、推論などの【作業台】の2つが相互に機能して進みます。【材料】を豊富に持っていても【作業台】が狭いと情報があふれ出ます。一方で、【作業台】が十分に広くても【材料】が少ないと推論の材料が足りません。
【材料】の不足は、推論の材料が不足していると言い換えることができます。ドイツ語をあまり知らない人がドイツ語の文章を読む時は、単語の拾い読みにしかなりません。したがって、ドイツ語で書かれた文章の内容全体を推論することが難しいのと同じです。
【作業台】が狭い場合、文章を読み進める間に蓄積される情報を保持、更新しきれずに文章の内容が分断されながら読み進めることになります。また、作業台の狭さは、因果・対比・要点抽出など文章構造の理解をする際の弱さにつながります。
次回のコラムでは、「つまずき」の具体的なサインやそれらに対する学習支援についてご紹介します。
#教育コラム263


