259.読めているのに理解できていない生徒②
前回の記事に続き、今回は具体的なアプローチをご紹介します。
ワーキングメモリは、「文章の前半を覚えておきながら後半を読む」「登場人物と出来事を関連づけて理解する」といった、「情報の記憶と処理」を支えています。(因みに、ワーキングメモリを「記憶力」と捉えている方が多いようですが、「記憶と処理」に関わる機能であることを付け加えておきます。)
さて、この力が弱いと、読解では次のようなつまずきが起こります。
・文章が長くなると、最初の内容を忘れてしまう
・接続詞や代名詞(「しかし」「その人」など)の意味がつかめない
・一文ごとの理解はできても、全体の構造がつかめない
つまり、「読んでいるのに、頭の中ではつながっていない」状態です。この状態にある生徒は、話し言葉ではスムーズに受け答えできるため、先生や保護者がつまずきに気がつきにくいのが特徴です。このような生徒に対しては次のアプローチが有効です。
・音読後に「どんな話だった?」と問いかける
→ 読後の簡単な要約やイメージの共有が有効です。
・登場人物や場面を図に書いて可視化する
→ 情報の整理を助け、記憶の定着を促します。
・一文ずつ読みながら「なぜ?」を一緒に考える
→ 推論や因果関係の理解を補強します。
「読めている=理解している」とは限りません。表面的な読みのスキルに隠れた“わかっていないサイン”を見逃さず、一歩踏み込んで「どうしたらこの子の理解が深まるか」を問い続けることが、支援の第一歩です。見えないつまずきに気づこうとする大人の姿勢こそが子どもたちの“わかる”を支えることにつながります。
#教育コラム259