180.流動性知能と結晶性知能②

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流動性知能と結晶性知能

ワーキングメモリは「頭の良さ」にも関係しています。知能や性格について科学的に明らかにする手法を研究してきた、心理学者のレイモンド・キャッテル氏は知能を二つに分けて概念化しました。一つ目は知識や経験など、年齢を重ねることによって増える「結晶性知能」、二つ目はその覚えたことを使って問題を解決したり、変化に対応したりする「流動性知能」です。

結晶性知能は長年の経験や学習によって獲得していく能力のため、年齢を重ねるにつれてどんどん伸びます。これまでの経験を土台にした記憶のデータベースのようなもので、いわゆる「教養」の高い人は、知識や経験を蓄積して結晶性知能が高いといえます。中でも語彙力は年齢を重ねるごとに向上し、高齢期になっても高いまま維持されることが分かっています。

一方、流動性知能はいわゆる「地頭」と表現されるような頭の良さと関係しています。情報を処理する力や、論理的に考える力、新しい課題を解決する力といった能力であり、ピークは20代でその後は低下の一途をたどるとされています。


図は、20歳の平均値をゼロとして、加齢に伴う知能の平均値をイメージ図として表したものです。流動性知能は20歳頃にピークに達し、その後は低下しているのがわかります。反対に、結晶性知能は20歳以降も年齢とともにどんどん伸びており、60代頃にピークを迎えています。

年齢を重ねるごとに知識や経験を貯めておくことはできますが、実際に、目の前の問題をどのように解決すれば良いのかと考えたり、その場面に必要な知識や経験を引き出したりするには流動性知能が欠かせません。この流動性知能に直結する脳の機能が「ワーキングメモリ」なのです。

ワーキングメモリの能力が高い人は、多くのことを一度に処理できます。おのずと、目の前の状況を分析し、必要とされる知識を引き出すなどの情報操作も進みやすくなり、さまざまな条件下で目的にかなった行動を遂行する力も高くなるというわけです。ただ記憶しているだけではなく、適切に思い出し使いこなすための検索・処理機能を担うワーキングメモリがあるから、過去に経験したことが問題解決やアイデアの創造に結びつくのです。

30代〜40代に仕事のパフォーマンスが下がったと感じるのは、この流動性知能の低下が関係している可能性があります。ただし、加齢による衰えだけではなく、一度つながりが弱まったシナプスを再度つなぎ直すには非常に労力がかかることから「使わなくなったことで脳が衰える」側面も大きいといわれています。

<引用>
ワーキングメモリを鍛えるながら脳トレ30』(秦有樹著 幻冬舎)


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