105.「考えること(思考)」とワーキングメモリ

『教師の勝算』(東洋館出版社)に「思考はどう働くか」を解説している章があります。「できる限り単純化した頭脳のモデル」として、「環境」、「ワーキングメモリ」、「長期記憶」を以下のモデルで表しています。


「環境」は見聞きするもの、解くべき問題などが含まれます。自分のまわりにあるものや景色が「環境」から「ワーキングメモリ」に入ります。「長期記憶」は、この世界の事実的な知識を保持する巨大な倉庫です。テントウムシには斑点があるとか、好きなアイスクリームの味はチョコレートである、といったことが保持されています。三角形は三つの辺を持つ閉じた形である、などの知識も「長期記憶」にあります。

「長期記憶」のすべての情報は意識の外側にあり、必要になるまでは静かに眠っています。そして、「ワーキングメモリ」に入ってはじめて意識されます。

例えば、「北極グマは何色ですか?」との質問を聞くと、皆様はすぐに「白」と答えることでしょう。この情報は30秒前には長期記憶の中にありましたが、この質問によって考えていることと関連づけられ、ワーキングメモリに入ってはじめて認識されました。

思考が生まれる時には、環境と長期記憶から情報が取得され、新しい方法で結合されます。この結合はワーキングメモリ内で起きます。正しく考えるにはワーキングメモリ内で概念を結合し、整理し直す方法を知る必要があるということが明確になります。

このように「ワーキングメモリ」を「意識」だと考えることで「ワーキングメモリ」への理解が深まることと思います。そしてそれが「思考」と結びつく、ということが分かりやすく解説されています。

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