33.ワーキングメモリとメタ認知

広島大学大学院の湯澤正通先生と福丸奈津子先生の研究によると、『学年が上がるにつれて、ワーキングメモリの容量が大きい児童と小さい児童の間の自己評価の差が大きくなり、ワーキングメモリの容量が小さい児童は、自分のことを過大評価しがちである、ということがわかった。』とあります。そして、『このことは、学年が上がるにつれて「わかったつもり」でいる児童が多くなっていることも示唆している』と続いています。

『わかっている』や『できている』というこどもの言葉を信じたい気持ちはありながらも、こどもが本当に学習内容を理解しているのかを不安に思う保護者の方も多いことでしょう。

脳の機能の一つに「ワーキングメモリ」があります。この容量は一人ひとり異なります。容量が大きいということは、一度に処理できる情報の量が多いということです。但し、容量が大きいことが良いというわけではありません。人にはそれぞれ容量があり、それは「脳の個性」です。

湯澤正通先生の研究からは、その容量の大小に関わらず、大人が児童ひとりひとりの特性を把握して、児童の「つもり」に気づいて学習支援をしていくことが必要であることが読み取れます。

また、自身の評価に大きなズレが生じることは、他者とのトラブルを起こす可能性も想定されます。「自分はできているのに、他者から評価されない」といったことが挙げられます。

自身の評価、自身を客観的に見ることを「メタ認知」といいます。「自分の認知(考える・感じる・記憶する・判断する等)活動を客観的にとらえること」です。メタ認知の能力が高まることで、以下の変化が見られることがあります。
・冷静に物事を考えられるようになる
・目標の達成が容易になる
・問題を解決する力が育まれる
・コミュニケーションがうまくとれる

幼稚園児から中学生にかけては、脳が著しく成長します。この成長に合わせて脳、特にワーキングメモリにはたらきかける取り組みをすることが、「メタ認知」の能力を高め、他者との関係性がより良くなる可能性が高まることが見込まれます。

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