《習慣化#020》
アイデンティティ・ベースの習慣

-「自己知覚」の考え方-

行動を変えたいとき、私たちはつい「何をするか」から考えます。しかし、本当に強い追い風になるのは、「自分をどう名乗るか」です。たとえば「運動をする」と考えるよりも「私は朝に体を動かす人です」と名乗ることです。

これは心理学の自己知覚(self-perception)の考え方に沿っています。人は自分の行動を手がかりに、「自分はこういう人だ」と物語をつくります。そして一度物語ができると、違う行動をとったときに小さな違和感が生まれます。この認知的不協和が違和感となり、次に行動する際は「物語に合わせる」方向へそっと押してくれるのです。

やり方はシンプルです。まず、なりたい自分を短い現在形の一文で表します。「私は食後に歯間ケアをする人です」「私は移動中に階段を選ぶ人です」。

ここで大切なのは、成果ではなくきっかけと行動を一緒に言うことです。つぎに、その一文に合うとても小さな実行を毎日ひとつ重ねます。朝はコップ一杯の水を飲む、メールを送ったら深呼吸を三回する、帰宅したら5分だけ片づける、のように小さな行動でも、繰り返されれば「やっぱり自分はそういう人だ」という手応えが育ち、物語が強くなります。

もし途切れた日があっても、物語を壊す必要はありません。ここで役に立つのが証拠集めです。カレンダーに○をつける、写真を一枚撮る、1行メモを書くなど、目で見える証拠は、自己知覚の材料になり、明日の自分を再び「その人」に戻してくれます。また、誰かにやさしく宣言しておくのも効果的です。周囲に知られているという事実が、物語とのズレを小さくし、言動の一貫性につながります。

「私は目の前に見える数字を全て、暗算で足し算する人です」という知的な習慣が身につけば、脳(アタマ)の健康にも効いてきそうですね。

このようにアイデンティティ・ベースの習慣は、意志の強さを試す方法ではなく、習慣化の設計ですので、まずは今日から一文だけ決めて実行してみましょう。きっと皆さまの達成感、充実感につながります。